小田原市のもてぎクリニックで診療を行っている、脳神経外科医の茂木秀明です。診療をしていると、「スマホを長時間見たあとに頭が痛くなる」「仕事でパソコンを使っていると後頭部が重くなる」「まだ若いけれど脳梗塞ではないか」と不安を感じて相談される方がいます。頭痛には片頭痛や緊張型頭痛などさまざまな原因があり、スマホやPCを使った後の頭痛が、すぐに脳の病気を意味するわけではありません。一方で、若い方でも脳梗塞や脳血管の病気が起こることはあります。痛む場所だけではなく、「どのように頭痛が始まったか」「いつもの頭痛と違うか」「しびれや話しにくさなどを伴っていないか」を確認することを大切にしています。今回は、いわゆる「スマホ頭痛」と、注意したい脳の病気の違いについて分かりやすく解説します。
スマホを見ていると頭が痛い……「スマホ頭痛」とは?
スマートフォンやパソコンは、仕事にも日常生活にも欠かせないものになっています。
その一方で、
- スマホを長時間見ていると頭が重くなる
- PC作業の後に後頭部が痛くなる
- 首や肩がこって頭まで痛くなる
- 画面を長く見た日に頭痛が起こりやすい
- 若いのに脳の病気ではないか心配
といった症状を感じる方もいらっしゃいます。
一般的に「スマホ頭痛」という言葉が使われることがありますが、「スマホ頭痛」という正式な医学的診断名があるわけではありません。
頭痛は大きく分けると、片頭痛や緊張型頭痛などの「一次性頭痛」と、脳や血管などの病気が原因となって起こる「二次性頭痛」があります。
日本頭痛学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」でも、頭痛を診療する際には、危険な二次性頭痛を見逃さないことが重要とされています。
また、若年成人を対象とした研究では、スクリーンを見る時間が長いことと片頭痛との関連が報告されています。ただし、これは「スマートフォンを見れば頭痛になる」という因果関係を意味するものではありません。
つまり、「スマホ頭痛」という一つの病気として考えるより、スマホやPCを使う生活の中で、どのような頭痛が起きているのかを整理することが大切です。
頭痛の中には、早めの受診が必要なものもあります。危険な頭痛の特徴や受診先については、「危険なタイプの頭痛とは?何科に受診したらよいか迷ったときの受診先ガイド」で詳しく解説しています。
スマホ・PCワークで頭痛が起こりやすくなる要因
長時間、同じ姿勢を続けている
スマートフォンを見るとき、無意識のうちに顔が下を向いたり、頭が前に出たりしていないでしょうか。
パソコン作業でも、画面に集中していると、
- 頭が前に出る
- 肩に力が入る
- 首をほとんど動かさない
- 同じ姿勢が長時間続く
といった状態になりやすくなります。
こうした状態が続くことで首や肩周辺に負担を感じ、後頭部から頭全体にかけて痛みや重さを感じる方もいます。
特に、
「首や肩がこる → 後頭部が重くなる → 頭が締め付けられるように痛む」
といった経過は、日常診療でも相談される症状の一つです。
ただし、「パソコンを使っていたから姿勢が原因」と自己判断するのはおすすめできません。
いつもと違う頭痛の場合には、別の原因がないか考えることも必要です。

画面や光が片頭痛に影響する場合もあります
片頭痛がある方では、頭痛の際に光をまぶしく感じたり、光を避けたくなったりすることがあります。
そのため、
- 長時間のディスプレイ作業
- 明るい画面を見続ける
- 暗い部屋でスマートフォンを見る
- 休憩を取らずに作業する
- 睡眠不足が続いている
といった状況が重なることで、頭痛を感じる方もいます。
若年成人を対象にした研究では、スクリーン使用時間が長いことと片頭痛との関連が報告されていますが、スマートフォンやPCだけが頭痛の原因とは限りません。睡眠やストレス、体調なども含めて考える必要があります。
後頭部痛は脳の病気なのでしょうか?
「後頭部が痛いので脳梗塞ではないか」
「後頭部だけズキズキするので脳に異常があるのではないか」
と心配される方も少なくありません。
しかし、後頭部が痛いという場所だけで、脳の病気かどうかを判断することはできません。
首や肩周辺の状態が関係している場合もありますし、片頭痛などでも後頭部に痛みを感じることがあります。
一方、脳神経外科医として注意しているのは、これまで経験したことのない頭痛や、突然始まった強い頭痛です。

若い方の突然の後頭部痛で注意する「脳動脈解離」
若い方の脳血管障害を考える際に知っておきたい病気の一つが「脳動脈解離」です。
動脈解離とは、動脈の壁に裂け目が生じ、血管壁の中に血液が入り込む状態です。
国立循環器病研究センターも、脳動脈解離について若年性脳血管障害の重要な原因の一つとしています。
頭痛や首の痛みが症状として現れることもあり、脳梗塞やく突然の激しい頭痛、片側の麻痺、ろれつが回らない、意識がおかしいといった症状は、通常の外来受診ではなく救急対応を考える必要があります。も膜下出血などにつながる場合があります。
そのため私は、
「後頭部だから大丈夫」
あるいは、
「若いから脳の病気ではない」
と、年齢や痛む場所だけで判断しないことが大切だと考えています。
若い人でも脳梗塞になることはあります
脳梗塞というと、「高齢者の病気」というイメージを持っている方が多いかもしれません。
確かに脳卒中は年齢とともにリスクが高くなる病気ですが、若い方にも脳梗塞が起こることはあります。
厚生労働省の脳血管障害・脳卒中に関する情報では、高血圧をはじめとする生活習慣病などが脳卒中と深く関係することが説明されています。
一般的な脳梗塞の危険因子としては、
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 喫煙
- 肥満
- 心房細動などの不整脈
などがあります。
一方、若年性脳梗塞では、こうした一般的な危険因子だけではなく、脳動脈解離など年齢に特徴的な原因について検討する場合があります。
だからといって、若い方の頭痛の多くが脳梗塞というわけではありません。
「若年性脳梗塞が怖い」と必要以上に不安になるよりも、脳卒中を疑う症状を知っておくことが重要です。

「スマホ頭痛」と脳の病気を考えるときのポイント
頭痛だけで病気を自己判断するのは難しいため、脳神経外科では痛みの強さだけではなく、頭痛の始まり方や一緒に現れた症状を確認します。
スマホ・PC作業中にみられる頭痛の一例
例えば、
- PC作業を続けるうちに徐々に頭が重くなる
- 首や肩のこりも感じる
- 以前にも似たような頭痛がある
- 作業を休むと楽になることがある
- 長時間スマホやPCを使用した日に起こりやすい
といった場合には、片頭痛や緊張型頭痛、首・肩の状態など、さまざまな可能性を考えます。
ただし、これらの特徴に当てはまれば必ず安全という意味ではありません。
特に「いつもと違う」という変化は重要です。
こんな頭痛・症状には注意してください
日本頭痛学会の「頭痛の診療ガイドライン2021」では、新しく発症した頭痛や突然起こった頭痛、神経症状を伴う頭痛、これまでの頭痛のパターンが変化した場合などについて、二次性頭痛の可能性を考えることが重要とされています。
特に注意したいのは、次のような症状です。
- 突然始まった非常に強い頭痛
- 短時間で急激に強くなった頭痛
- これまで経験したことのない頭痛
- 片側の顔や手足が動かしにくい、しびれる
- ろれつが回らない
- 言葉が出てこない、相手の言葉を理解しにくい
- 突然見えにくくなった、物が二重に見える
- 急にまっすぐ歩けなくなった
- 強いふらつきが突然起こった
- 意識状態がおかしい
- 発熱などを伴い、全身状態が悪い
- 頭をぶつけた後に頭痛が強くなってきた
- 今までとは明らかに頭痛の性質が変わった
厚生労働省の脳卒中に関する情報でも、脳卒中では半身の麻痺やろれつが回らないなどの症状が突然現れることがあり、早期の治療が重要とされています。
突然の激しい頭痛+麻痺・言葉の異常は救急対応を
例えば、
「突然、今までにない激しい頭痛が起こった」
あるいは、
「急に右手が動かなくなり、言葉も話しにくくなった」
といった症状の場合には、通常の外来診療を待つのではなく、救急要請が必要になることがあります。
脳卒中では治療開始までの時間が重要になるため、「若いから大丈夫だろう」と様子を見ることは避けたほうがよい症状があります。
頭痛だけでなく、めまいやしびれなどを伴う場合は、症状の組み合わせにも注意が必要です。「頭痛・めまい・しびれの危険度チェックリスト」では、受診を考える目安を症状別に紹介しています。

頭痛があればMRIを撮ったほうがよいのでしょうか?
「頭が痛いなら、とりあえずMRIを撮ったほうが安心なのでは?」
と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、すべての頭痛にMRI検査が必要というわけではありません。
頭痛の診療では、まず問診が非常に重要です。
私は診察の際、
- いつから痛いのか
- 突然始まったのか、徐々に始まったのか
- どこが痛むのか
- どのような痛みなのか
- 以前にも同じような頭痛があったか
- 頭痛の頻度や強さが変わっていないか
- しびれや麻痺などを伴っていないか
- 持病や服用している薬があるか
などを確認します。
日本頭痛学会のガイドラインでも、問診や身体・神経学的診察を行ったうえで、必要に応じて画像検査などを検討することが示されています。
症状によってはMRI・MRAやCTなどの画像検査を検討します。
どの検査が必要かについては、症状や発症状況を確認したうえで、医師が必要に応じて判断します。
もてぎクリニックでも、頭痛の特徴や神経症状の有無などを確認し、必要に応じて検査について判断しています。
スマホ・PCワークによる頭痛を減らすためにできること
スマートフォンやパソコンは仕事や生活に欠かせないため、「使わない」というのは現実的ではありません。
そこで大切になるのが、長時間同じ状態を続けないことです。
画面を見続けず、ときどき休憩する
長時間連続して画面を見るのではなく、ときどき視線を画面から外し、姿勢を変えてみましょう。
大切なのは「何分休めば必ず頭痛を予防できる」ということではなく、自分の体調を確認しながら、長時間連続した作業を避けることです。
スマートフォンを低い位置で見続けない
スマートフォンを膝の上など低い位置で見続けると、頭を前に倒した姿勢が長く続きやすくなります。
可能な範囲で画面の位置を調整し、一つの姿勢を長時間続けないよう意識してみてください。
首や肩を軽く動かす
仕事の合間に立ち上がったり、肩をゆっくり動かしたりすることも一つの方法です。
ただし、強い痛みがある状態で無理に首を動かす必要はありません。
特に、突然生じた強い後頭部痛や首の痛みがある場合には、自己判断で首を強くひねったり、強いマッサージをしたりする前に医療機関へ相談することが大切です。
睡眠時間や生活リズムも見直す
スマホ頭痛というと「画面」だけに注目しやすいのですが、頭痛は睡眠や日々の生活とも関係します。
夜遅くまでスマートフォンを使っている方は、
- 就寝時間が遅くなっていないか
- 睡眠時間が不足していないか
- 仕事や勉強で休憩が減っていないか
- 食事を抜くことが増えていないか
なども振り返ってみましょう。

頭痛日記をつけてみる
繰り返す頭痛がある方には、簡単な「頭痛日記」も役立ちます。
記録しておきたい内容は、
- 頭痛が起きた日時
- 痛んだ場所
- 痛み方
- 頭痛の強さ
- どのくらい続いたか
- 吐き気の有無
- 光や音をつらく感じたか
- スマホ・PCをどのくらい使用していたか
- 睡眠時間
- 服用した薬
などです。
診察時にこうした情報があると、頭痛の特徴を整理するための参考になります。
若い方が頭痛で脳神経外科を受診する目安
「脳神経外科は高齢者が行くところでは?」
と思っている若い方もいるかもしれません。
しかし、脳神経外科では年齢だけで病気の可能性を判断するわけではありません。
例えば、
- 最近になって頭痛を繰り返すようになった
- これまでとは違う頭痛が出てきた
- 後頭部痛が続いている
- 頭痛の頻度が増えている
- 市販薬を使用する機会が増えている
- 頭痛の原因が分からず不安が強い
といった場合には、一度医療機関で相談することも選択肢の一つです。
一方で、突然の激しい頭痛、片側の麻痺、ろれつが回らない、意識がおかしいといった症状は、通常の外来受診ではなく救急対応を考える必要があります。
「脳神経外科に行くほどではないだろう」と年齢だけで判断せず、症状の現れ方を確認することが重要です。
まとめ|スマホ頭痛と若年性脳梗塞は「頭痛の始まり方」と「一緒に出る症状」が重要です
スマホやPCを使う時間が長い若い世代では、頭痛や後頭部、首・肩周辺の不快感を経験することがあります。
しかし、「スマートフォンを使ったから脳梗塞になった」「スマホを使った後の頭痛だから脳には問題がない」と単純に判断することはできません。
若年成人では、スクリーン使用時間と片頭痛との関連を示した研究がありますが、因果関係を断定するものではありません。
また、脳梗塞は高齢者だけの病気ではなく、若い方にも起こる可能性があります。特に脳動脈解離は若年性脳血管障害の原因として注意が必要です。
脳神経外科医として私が特に重視しているのは、
「いつもの頭痛と同じか」
「突然始まった頭痛ではないか」
「麻痺や言葉の障害などを伴っていないか」
という点です。
小田原市のもてぎクリニックでは、頭痛の経過や症状を確認したうえで、必要に応じて画像検査などが必要かどうかを判断しています。
気になる頭痛が続いている場合や、これまでとは違う症状があり不安を感じている場合には、専門の医療機関へ相談することも一つの方法です。
よくあるご質問(Q&A)
Q1.スマホを見すぎると脳梗塞になりますか?
スマートフォンを長時間使用すること自体が、直接脳梗塞を起こすと確認されているわけではありません。
一方、若年成人を対象とした研究では、スクリーン使用時間が長いことと片頭痛との関連が報告されています。これは「スマートフォンを使えば片頭痛や脳梗塞になる」という意味ではありません。
脳梗塞については、高血圧や糖尿病、喫煙、不整脈など、さまざまな危険因子を考える必要があります。
Q2.20代・30代でも脳梗塞になることがありますか?
あります。
脳卒中は高齢者に多い病気ですが、若い方でも発症することがあります。
若年性脳梗塞の場合には、一般的な生活習慣病だけでなく、脳動脈解離など若い世代でもみられる原因について検討する場合があります。国立循環器病研究センターも、脳動脈解離を若年性脳血管障害の重要な原因の一つとしています。
Q3.後頭部が痛いと脳梗塞の可能性がありますか?
後頭部が痛いというだけで脳梗塞と判断することはできません。
首や肩周辺の状態や片頭痛などでも、後頭部に痛みを感じることがあります。
ただし、突然の強い後頭部痛に加えて、
- 麻痺
- しびれ
- 言葉が話しにくい
- 視覚の異常
- 強いふらつき
などが現れた場合には、早急な評価が必要になることがあります。
Q4.頭痛があればMRIを受けたほうが安心ですか?
すべての頭痛にMRIが必要なわけではありません。
頭痛の発症状況や症状、神経学的な所見などを確認して、MRI・MRAやCTなどの検査が必要かどうかを医師が判断します。
「MRIを撮ること」そのものが目的ではなく、症状に応じて必要な検査を選択することが大切です。
Q5.若くても頭痛で脳神経外科を受診してよいですか?
もちろん年齢だけを理由に受診を控える必要はありません。
「最近頭痛が増えてきた」「以前とは違う頭痛がある」「後頭部痛が繰り返していて不安」といった場合には、医療機関へ相談することも一つの方法です。
一方、突然の激しい頭痛や麻痺、言語障害、意識障害などがある場合には、通常の外来受診を待たず救急要請を検討してください。
気になる頭痛・めまい・しびれが続く場合は、早めに専門の医療機関へご相談ください。
茂木クリニック 脳神経外科 ブログ(https://motegiclinic.com/blog/)
神奈川県小田原市蓮正寺275-3


