「睡眠不足が続いて頭痛がする」「寝不足で脳梗塞になることはあるの?」「頭痛が続く場合はMRIが必要?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
一晩寝不足になったからといって、直ちに脳の病気を発症するわけではありません。しかし、慢性的な睡眠不足や睡眠の質の低下は、集中力や判断力だけでなく、血圧や血糖、心臓や血管の健康にも影響を及ぼす可能性があります。
また、寝不足は片頭痛などを引き起こすきっかけの一つですが、頭痛をすべて「睡眠不足のせい」と判断するのは危険です。
この記事では、睡眠不足が脳や身体に与える影響、脳梗塞との関係、医療機関を受診した方がよい頭痛、MRIやCTなどの検査を検討するケースについて解説します。

睡眠不足が続くと脳に何が起こる?
睡眠は、身体を休めるだけの時間ではありません。
睡眠中には、記憶の整理や神経機能の調整など、脳の働きを維持するためのさまざまな活動が行われています。
睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、次のような変化が現れることがあります。
・日中に強い眠気が出る
・集中力や注意力が低下する
・判断力が低下する
・物事を記憶しにくくなる
・イライラしやすくなる
・疲労感や倦怠感が強くなる
・仕事や運転中のミスが増える
健康な成人では、おおよそ6~8時間が適正な睡眠時間の目安とされ、少なくとも6時間以上の睡眠を確保するよう努めることが推奨されています。ただし、必要な睡眠時間には個人差があるため、時間だけでなく、目覚めたときの休養感や日中の眠気も確認することが大切です。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があります。睡眠時間だけでなく、目覚めたときに休めた感じがあるか、日中に強い眠気がないかという点も重要です。
睡眠時間の目安や睡眠の質を高める方法については、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も参考になります。
参考:厚生労働省「睡眠対策・Good Sleepガイド」
睡眠不足になると脳血流は低下する?
インターネット上では、「睡眠不足になると脳血流が低下する」と説明されることがあります。
しかし、睡眠不足によって脳全体の血流が一律に低下すると断定することはできません。
睡眠不足による影響は、寝不足が続いた時間、年齢、健康状態、検査方法、脳の部位などによって異なります。
現在の研究では、睡眠不足や睡眠障害によって、脳の一部で血流が変化したり、脳の活動に応じて血液を届ける調節機能に影響が生じたりする可能性が示されています。
そのため、「睡眠不足になると必ず脳血流が低下する」というよりも、次のように考えるのが適切です。
睡眠不足や睡眠障害によって、脳血流や血流を調節する働きに変化が生じる可能性があります。
特に、睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に低酸素状態が繰り返されることで、脳や血管に負担がかかる可能性があります。

睡眠不足で頭痛が起こるのはなぜ?
睡眠不足や睡眠リズムの乱れは、頭痛を引き起こすきっかけになることがあります。
ただし、睡眠不足と頭痛の関係は単純ではありません。
寝不足が頭痛を誘発することがある一方で、片頭痛の発作が始まる前の変化として、眠気や睡眠リズムの乱れが現れる場合もあります。
片頭痛が誘発されることがある
睡眠不足、寝過ぎ、起床時間の大幅な変化などは、片頭痛発作のきっかけになることがあります。
片頭痛では、次のような症状がみられることがあります。
・ズキズキと脈打つように痛む
・頭の片側または両側が痛む
・歩行や階段の昇り降りなどで悪化する
・吐き気や嘔吐を伴う
・光や音をつらく感じる
・頭痛の前に視界がチカチカすることがある
ただし、症状だけで片頭痛と断定することはできません。
頭痛を繰り返す場合や、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関で診断を受けることが大切です。
片頭痛や緊張型頭痛など、頭痛の種類と特徴については、日本頭痛学会の一般向け情報でも詳しく紹介されています。
参考: 日本頭痛学会「頭痛について知る」
疲労や首・肩のこりが重なる
寝不足による疲労に加えて、長時間のパソコン作業やスマートフォン操作が重なると、首や肩のこりを伴う頭痛が起こりやすくなることがあります。
頭全体が締めつけられるように痛む場合は、緊張型頭痛の可能性があります。
ただし、緊張型頭痛の原因は一つではなく、首や肩の筋肉の緊張だけで説明できるものではありません。
カフェインの摂取量が変化する
眠気を抑えるために、コーヒーやエナジードリンクを多く飲むと、カフェインが頭痛に影響することがあります。
一方、普段から多くのカフェインを摂取している方が急に量を減らした場合にも、離脱症状として頭痛が現れることがあります。
睡眠不足を解消するためにカフェインを過剰に摂取すると、夜に眠れなくなり、さらに寝不足が続く悪循環に陥ることもあります。
カフェインや飲酒と睡眠の関係については、厚生労働省の健康情報も参考にしてください。
参考:厚生労働省「快眠と生活習慣」
睡眠不足が続くと脳梗塞になる?
睡眠不足だけが直接の原因となり、すぐに脳梗塞を発症するわけではありません。
一方で、短過ぎる睡眠時間や長過ぎる睡眠時間、睡眠の質の低下は、脳梗塞や脳出血を含む脳卒中のリスクと関連することが報告されています。
ただし、これは「睡眠不足があれば必ず脳梗塞になる」という意味ではありません。
脳梗塞には、主に次のような要因が関係します。
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・心房細動などの不整脈
・喫煙
・肥満
・運動不足
・過度な飲酒
・加齢
・動脈硬化
慢性的な睡眠不足は、血圧、血糖、食欲、自律神経、生活習慣などに影響する可能性があります。
その結果、ほかの危険因子と重なることで、長期的な脳卒中や心血管疾患のリスクに関係すると考えられています。
脳梗塞を予防するためには、睡眠だけを見るのではなく、血圧や血糖値、コレステロール、体重、喫煙、飲酒などを含めて管理することが重要です。
脳梗塞のリスクを高める生活習慣や、日常生活で取り組める予防方法については、以下の記事もご覧ください。関連記事:「めまい、頭痛」が続く方へ|脳梗塞のリスクを高める生活習慣と予防のヒント

睡眠時無呼吸症候群にも注意が必要
睡眠時間を十分に確保していても、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる「睡眠時無呼吸症候群」があると、睡眠の質が低下します。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に低酸素状態と覚醒が繰り返され、交感神経が活発になります。
また、高血圧、心房細動などの不整脈、心不全、冠動脈疾患、脳卒中などとの関連も指摘されています。
次のような症状がある場合は注意が必要です。
・大きないびきを指摘される
・睡眠中に呼吸が止まっていると言われる
・夜中に何度も目が覚める
・朝起きたときに口が乾いている
・起床時に頭痛がある
・十分に寝たつもりでも疲れが取れない
・日中に強い眠気がある
・居眠り運転をしそうになる
・高血圧の治療をしても血圧が下がりにくい
睡眠時無呼吸症候群に関連して、朝の頭痛がみられることがあります。
ただし、朝に頭痛があるからといって、必ず睡眠時無呼吸症候群というわけではありません。
頭痛を繰り返す場合は、脳神経外科、脳神経内科、睡眠外来などへ相談しましょう。

睡眠不足による頭痛でもMRIは必要?
寝不足の後に頭痛が起きたからといって、すべての方にMRI検査が必要になるわけではありません。
医療機関では、次のような点を確認したうえで、画像検査が必要かどうかを判断します。
・頭痛がいつ始まったか
・突然起こったか、徐々に起こったか
・どのくらいの時間で最も強くなったか
・頭のどこが痛むか
・どのような痛み方か
・頭痛の頻度や強さが変化しているか
・手足の麻痺やしびれがないか
・言葉や意識の異常がないか
・発熱や嘔吐を伴っていないか
・がんや免疫機能低下などの既往がないか
典型的な片頭痛や緊張型頭痛で、危険な兆候がなく、神経学的な診察にも異常がない場合は、画像検査を必要としないことがあります。
一方、危険な頭痛が疑われる場合は、症状や緊急性に応じて、MRIやCT、脳血管を確認する検査などが選択されます。

MRIやCTなどの検査を検討する頭痛
次のような場合は、医師の判断により画像検査が検討されます。
・頭痛の回数や強さが徐々に増している
・今までとは異なる性質の頭痛が現れた
・手足の麻痺やしびれを伴う
・言葉が出にくい、ろれつが回らない
・視力や視野の異常を伴う
・ふらつきや歩きにくさを伴う
・発熱を伴う
・頭部を打った後に頭痛が続いている
・がんの既往がある
・免疫機能が低下している
・50歳を超えてから新しい頭痛が始まった
・妊娠中や出産後に、これまでと異なる頭痛が現れた
これらは、画像検査の必要性を検討する「危険な兆候」に含まれます。
ただし、該当するからといって、必ず脳の病気があるとは限りません。
また、該当しなくても、症状や診察結果によっては検査が必要になる場合があります。
MRIが必要かどうかを自己判断するのではなく、まず医師の診察を受けることが重要です。
MRIとCTはどのように使い分ける?

頭痛の検査では、すべての場合にMRIを行うわけではありません。
症状や疑われる病気、緊急性によって、MRIとCTを使い分けます。
MRIが検討されるケース
MRIは、脳梗塞、脳腫瘍、炎症性疾患、脳や血管の構造的な異常などを詳しく調べる際に用いられます。特に早期の脳梗塞の確認に有用ですが、症状や緊急性によってはCTなどの検査が先に行われることもあります。
放射線による被ばくがないことも特徴です。
一方で、検査に一定の時間がかかり、体内に金属や一部の医療機器が入っている場合には、検査を受けられないことがあります。
CTが優先されるケース
CTは短時間で撮影でき、脳出血、くも膜下出血、頭部外傷など、緊急性の高い状態を調べる際に用いられます。
特に、突然発症して短時間で痛みが最大になる「雷鳴頭痛」では、くも膜下出血などを確認するため、緊急時の初期検査として頭部CTが優先されることがあります。
そのため、突然の激しい頭痛がある場合は、「MRIを予約しよう」と考えるのではなく、速やかに救急医療機関を受診することが大切です。
すぐに救急受診が必要な頭痛
次のような症状がある場合は、睡眠不足による頭痛と思い込まず、救急車の要請を含めて、速やかに医療機関を受診してください。
突然の激しい頭痛
「バットで殴られたような痛み」「今まで経験したことがない激しい頭痛」など、突然始まり、短時間で最も強くなる頭痛は、くも膜下出血などの可能性があります。
顔や手足の動かしにくさ
次のような症状は、脳梗塞や脳出血などの可能性があります。
・顔の片側が下がる
・片方の手足に力が入らない
・片方の手足が急にしびれる
・箸やコップを落とす
・まっすぐ歩けない
言葉の異常
次のような症状がある場合も注意が必要です。
・ろれつが回らない
・言葉が出てこない
・相手の言葉を理解できない
・会話がかみ合わない
これらの症状は、一度改善しても一過性脳虚血発作の可能性があります。
症状が消えたからといって様子を見ず、速やかに受診してください。
意識やけいれんの異常
次のような場合も緊急性があります。
・呼びかけへの反応が悪い
・強い眠気があり、起こしにくい
・意識を失った
・けいれんを起こした
発熱や繰り返す嘔吐を伴う
激しい頭痛に発熱、首の硬さ、繰り返す嘔吐などを伴う場合は、髄膜炎や脳炎などの可能性もあります。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の特徴や、脳卒中を疑う症状については、国立循環器病研究センターの解説も参考になります。
参考:国立循環器病研究センター「脳卒中」

睡眠を整えるためにできること
睡眠不足を改善するには、睡眠時間を確保するだけでなく、睡眠のリズムや質を整えることが大切です。
起床時間をなるべく一定にする
休日も含めて起床時刻を大きく変えないようにすると、体内時計が整いやすくなります。
寝不足を補うために休日の昼まで寝てしまうと、夜に眠れなくなり、睡眠リズムがさらに乱れる場合があります。
起床後に光を浴びる
朝に太陽の光を浴びることで、体内時計が調整され、夜に自然な眠気が起こりやすくなります。
日中に適度な運動をする
ウォーキングなどの適度な運動は、睡眠の質を整えるために役立ちます。
ただし、就寝直前の激しい運動は身体を覚醒させることがあるため、避けた方がよいでしょう。
夕方以降のカフェインを控える
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、寝つきや睡眠の深さに影響することがあります。
カフェインの影響には個人差があります。
眠りにくい場合は、午後からカフェインの摂取量を減らしてみましょう。
寝酒を習慣にしない
アルコールを飲むと寝つきがよくなったように感じることがあります。
しかし、睡眠が浅くなり、夜中や早朝に目が覚めやすくなることがあります。
いびきや睡眠時無呼吸を悪化させる可能性もあるため、寝酒を睡眠対策にすることはおすすめできません。
就寝前のスマートフォンを控える
寝る直前までスマートフォンやパソコンを使うと、画面の光や情報による刺激で眠気が弱くなることがあります。
就寝前は照明を少し落とし、身体と脳を休める時間をつくりましょう。
具体的な睡眠習慣の改善方法については、厚生労働省の一般向け睡眠情報も参考になります。
参考: 厚生労働省「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質」

頭痛を繰り返す場合は記録をつけましょう
頭痛を繰り返す場合は、頭痛日記をつけると診断や治療に役立ちます。
次の内容を記録しておきましょう。
・頭痛が起こった日時
・前日の睡眠時間
・頭痛が続いた時間
・痛みの強さ
・痛む場所
・ズキズキするか、締めつけられるか
・吐き気や光、音への過敏があるか
・手足のしびれや視覚症状があるか
・服用した薬と効果
・月経、天候、飲酒、食事などとの関係
記録を続けることで、「寝不足の日に起こりやすい」「休日に寝過ぎると起こる」「朝起きたときに多い」などの傾向が分かることがあります。
頭痛の日時、強さ、服用した薬、吐き気、光や音への過敏などを記録できる頭痛ダイアリーが、日本頭痛学会から公開されています。
参考: 日本頭痛学会「頭痛ダイアリーで頭痛を攻略」
まとめ
睡眠不足が続くと、日中の眠気、集中力や判断力の低下、疲労感などが現れやすくなります。
睡眠不足によって脳全体の血流が必ず低下するとはいえませんが、睡眠不足や睡眠障害により、脳血流や血流を調節する働きに変化が生じる可能性があります。
また、睡眠不足だけで直ちに脳梗塞になるわけではありません。
しかし、短過ぎる睡眠や睡眠の質の低下は、脳卒中のリスクと関連することが報告されています。
寝不足は片頭痛などを誘発することがありますが、頭痛をすべて睡眠不足のせいと判断してはいけません。
次のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
・頭痛を何度も繰り返す
・頭痛の頻度や強さが増している
・以前とは異なる頭痛が現れた
・朝の頭痛や強い日中の眠気が続く
・大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された
・手足のしびれや言葉の異常を伴う
特に、突然の激しい頭痛、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、意識障害、けいれんなどがある場合は、MRIの予約を待たず、速やかに救急医療機関を受診してください。
気になる頭痛・めまい・しびれが続く場合は、早めに専門の医療機関へご相談ください。
茂木クリニック 脳神経外科 ブログ(https://motegiclinic.com/blog/)
神奈川県小田原市蓮正寺275-3


